浮雲

読む 読み取る 感じてみて考えてみる 読書記録の部屋です

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

運転者 喜多川泰

「運転者」 少し違和感がありませんか?「運転手」じゃなくて運転者? タイトルを見た時に何故かそんな違和感を覚えました。 不思議なタクシー... ならば職業を言い表す「運転手」じゃないの?この本に手をつけたきっかけは、この小さな疑問からでした。 中…

インディペンデンス・デイ 原田マハ

インディペンデンス・デイ なんとも勇ましいタイトルですね。高らかに鳴るファンファーレ。打ち上がる花火。舞い散る紙吹雪。 いえいえ、そんな騒々しいお話ではないのです。 その物語から次の物語へと、緩やかに重ね合わさりながらバトンしていく主人公達。…

斜陽 太宰治

「じっさい華族なんてものの大部分は、高等御乞食とでもいったようなものなんだ。しんの貴族は、あんな岩島みたいな下手な気取りかたなんか、しやしないよ。おれたちの一族でも、ほんものの貴族は、まあ、ママくらいのものだろう。あれは、ほんものだよ。か…

雑記 読書について

「速読術」というのが、あまり好きではありません。 文章を手早く読む、という事は良くあります。もっぱら新聞・ニュースの読み取り、仕事上のこと、webで、などの場合です。 一時期ほどではないですが、速読術やら瞬読やらの本は未だ多いですし、最近では本…

博士の愛した数式 小川洋子

「簡潔に申せば、頭の中に八十分のビデオテープが一本しかセットできない状態です。そこに重ね録りしてゆくと、以前の記憶はどんどん消えてゆきます。義弟の記憶は八十分しかもちません。きっちり、一時間と二十分です」(本文より) 家政婦として女手一つで…

夜のささやき、闇のざわめき 英米古典怪綺談集

海外古典文学の読みにくさを考える時に、こんな経験はないでしょうか? 登場人物がやたらに多く、その人名もなにやら発音しづらく憶えづらく、それらの関係を把握しきれないまま物語が進んでいく。 あるいは、修辞句がとても長く多く、文章の流れが冗長に感…

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン

ある日彼女のトイレの水があふれて、うちのシャンデリアを伝って床まで水がしたたり落ちた。まだ灯ったままの明かりに水しぶきが散って、虹がかかっていた。アーミテージさんは死にかけの冷たい手でわたしの腕をつかんで「ああ、奇跡みたいだわねえ」と言っ…